2015(平成27)年12月12日 世田谷文学館

世田谷文学館
東京都世田谷区南烏山1丁目10番10号 電話03-5374-9111 http://www.setabun.or.jp/

京王線芦花公園駅で降りてしばらく歩くと、手前の芦花翠風邸の純日本風のたたずまいと正反対の超近代的な建物の世田谷文学館に到着です。入り口を入ると、広々としたガラス張りのロビーがあり、ガラス張りの壁面の向こうには大きな鯉の泳ぐ翠風邸の池も見えます。

ロビーはオープンスペースになっていて、イベントや特別展示にも利用されます。

このロビーはオープンスペースになっていて、イベントや特別展示にも利用されます。
私が訪れた日は、たくさんの絵本がいろいろな形の書棚に収められて、子様たちもここでゆっくり好きな本を手にとってみることができるようになっていました。

1階にある受付のカウンターの奥には、日本や世界の絵本コーナーがあります。そこで見つけたのが、『別冊太陽日本のこころ116号winter2001』です。「人生ではじめて出会う絵本100」という記事を見つけました。あかちゃんのための50冊、おとなのための50冊という副題です。

第1部の「あかちゃんだから出会える絵本50」で紹介されている中から3冊について。まず、なかのひろたか/文・絵、なかのまさたか/レタリング『ぞうくんのさんぽ』福音館書店(1977)がすごくいいなと思いました。ぞうくんがお散歩している途中で、かばくん、かめくん、わにくんに会って、みんなを背中に乗せて歩いていたら、重すぎてドッボーン!と池の中に落っこちちゃったというお話。次はエリック・カール/文・絵、もりひさし/訳の有名な『はらぺこあおむし』偕成社(1976)です。小さな卵からかえった青虫が腹ペコで、りんご、なし、いちご、ケーキ、チーズ…と次々に食べ、最後は絵本一杯に翅を広げた優雅な蝶の絵のページ。ちょうど子どもの指が入るくらいの、青虫が食べた後の穴、すごいアイディアだと思います。最後は北山葉子/文・絵『だからこぶたちゃん』偕成社(1987)。最後の締めが素敵です。こぶたちゃんのお父さんもお母さんも豚。だから自分は何をしてもこぶたちゃん。こう書かれています。「おとうさんは ぶた。」「おかあさんも ぶた。」「だから、ぼくは こぶたちゃん。」

第2部の「おとなになっても出会える絵本50」からは、1冊だけ紹介します。モンゴル民話、大塚勇三/再話、赤羽末吉/絵『スーホの白い馬』福音館書店(1967)です。モンゴルの楽器「馬頭琴」にまつわる悲しいお話です。小学校の国語の教科書でも扱われたこともありますし、私も編集に携わっている三省堂高校英語教科書VISTA I New Edition(2001)でも扱いました。生まれたばかりの真っ白な仔馬を助け立派な白馬に育てたスーホは、とのさま主催の競馬大会に出て優勝したのですが、その馬をとのさまに奪われてしまいます。ところが、白馬はまたがったとのさまを振り落とし逃げ出し、家来たちの矢を受けてスーホの元へ戻ります。しかし、命が尽きてしまいます。夢の中でスーホは、自分の骨、皮、毛を使って楽器を作ってくれと言う白馬の願いを聞き、「馬頭琴」を作ったのです。絵本一杯に描かれた絵が素晴らしく、モンゴルの大草原を背景にした少年と白馬の物語は大人が読んでも心打たれるものです。まだまだ紹介したい絵本がたくさんあるのですが、またの機会のお楽しみに。英語の絵本もたくさん書棚に並んでいます。是非、皆さん足をお運びください。

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